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ビジネスブレークスルーでボンド大MBA講師( http://j.mp/banLk4 ) /新卒でコンサル(ブーズ)⇒取締役として25歳でアルー創業⇒新事業立ち上げ /「人を巻き込む仕事のやり方」出版( http://j.mp/7b4PDE ) /研究対象⇒のめりこむ人・突き抜けた人・クリエイティブクラス・オタク・天才

2010年12月31日金曜日

書評→世界の野菜を旅する (講談社現代新書): 玉村 豊男

書評を書きました。

この本を読んで、2011年は海外に
たくさん行きたくなりました
(時間のやりくりしないとですね・・・)。
良いきっかけを頂いたことに感謝。




↓↓↓
著者の経歴が非常にユニークである。
世界中を旅する傍ら農場とワイナリーを経営し、
世界各地から種を取り寄せて栽培した野菜を料理して
自らのカフェで提供する。
一方、毎年個展を開催する画家でもあり、
多数の著書を持つエッセイストとしても広く活躍している。

「野菜が大好きで、毎日おそらく人の三倍から五倍の量を食べている」
(4項)という著者が展開するのは、地球単位の壮大な歴史と旅の物語。
野菜をキーワードに、世界各国の食文化や関連するエピソードが
縦横に紡ぎ合わされているのが、本書の魅力と言える。

例えば、フランス人はフルコースの食事に三時間かける中で
「一時間半がデザートを食べている時間」(233項)であるという。
「デザートからが後半戦」なのは、砂糖がかつての王侯貴族にとって
富と権力の象徴だったことが起源となっている。

新大陸の発見前はコショウが中世ヨーロッパにおいて
富と権力の象徴だったが、ルネサンス期を境に、
上流階級の嗜好はコショウから砂糖へと移っていく。
ところがアラブ商人に砂糖の流通ルートを押さえられた
ヨーロッパ諸国は、新大陸の発見に伴い
西インド諸島に生産拠点を拡充する。
この大量生産により、砂糖は特別な富裕層でなくとも手の届く
嗜好品に近づいていった。
そして今度は英仏間の争いの中で、大陸封鎖をきっかけに、
ナポレオンが砂糖の自国生産を一気呵成に展開する。
これらの経緯を経て、砂糖の価格は一般の手に届くレベルにまで落ち着いたが、
遡ると「争いの中心にあるのはつねに砂糖だった」(231項)
という時代があったわけだ。

本書の冒頭に、「野菜を食べることは、
その野菜が持つ物語を食べることだ」(5項)とある。
歴史や物語に思いを馳せながら、心の中で野菜と対話してみることで、
日々の食事はもっと豊かな時間になるのではないだろうか。

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